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Special Interview Vol.1

2020年シリーズチャンピオン 三浦愛

『ドライバーとしての意識が変わる 転機になったシーズンでした』

2020年のKYOJO CUPは、全日本F3選手権で優勝経験を持つ三浦愛選手の参戦が大きな話題に。三浦選手は第2戦の優勝をはじめ、全4戦で表彰台を獲得する安定感で見事にシリーズチャンピオンに輝いた。新たな挑戦だったKYOJO CUP、その戦いを振り返ってもらった。

KYOJOCUPへのイメージと実際
未知数だったシリーズ参戦

モータースポーツ人口の中で言えば、やっぱりまだ女性は分母としてはとても小さいので、女性だけのレースが成り立つのだろうか、と思っていました。私自身がこれまでレースで戦ってきて実感している男性との身体能力の違いもありますし、育ってきた環境、レースに取り組める環境が全く違うドライバーたちが集まる、そのシリーズというのは未知数というか、正直に言えばちょっとした疑心みたいなものもありました。でも、実際に開幕戦で会ったKYOJOの中には、カートから上がってきて速いドライバーもいたし、レースに対しての取り組み方っていう部分で素晴らしい人がたくさんいて。私自身、追いかけられているという感覚でシーズンを戦うことができたのはとても刺激になりました。

女性ドライバーとVITA-01
KYOJOCUPにベストなマシン

最初に言ったように、男性と女性でやっぱり身体能力の差というか、違いというものはありますが、VITAは女性にとってとても「ちょうどいい」マシンだなと思いました。一発の筋力というか、瞬発力は女性が対応できるレベルですし、体力的には楽でした。スピード域としても、カートから上がって来たり、市販車でサーキットを走っていた人にとっても乗りやすいです。車重も軽くて動きが機敏で、自分の操作に対してリニアに動いてくれるので、そこがいいと思います。VITAのレースは、昨年からダンロップタイヤに変わりましたが、走り込みが大切なこのクラスでタイヤのたれが少ないのはいいですよね。

レースを共に戦った仲間たち
それぞれの目標に対する意識の高さ

カート上がりの子たちは最初から勝つ気で来ているし、一方で結果はもちろん目指しつつ、KYOJOCUPを広めよう、モータースポーツの魅力をもっと広く知ってもらおうというテーマも持って参戦しているドライバーもいたり、ドライバーそれぞれ、KYOJO CUPになぜ参戦しているのかっていう目的意識がはっきりしている人が多いなと感じました。それは、他に仕事を持っていながら参戦していたり、学生だったり、様々な背景があるから。いろんな環境の人たちがレースに参戦できるという意味では、KYOJO CUPというのはとてもいいカテゴリーだなと思います。直接面識がなくても、自分をあこがれのドライバーとして挙げてくれる若い女性ドライバー達がいることは正直嬉しかったし、彼女たちと直接一緒に走れたことで、「目指してもらっているからこそ、お手本にならないと」という気持ちが強くなって、自分自身のレースに対する意識が変わりました。

早々に訪れたターニングポイント
開幕戦で敗れたことが大きな転機に

開幕戦でポールポジションから優勝できなかったことは、シーズン前に全戦全勝を目標に掲げていた私にとって大きなことでした。自分の弱さが全部出ていた開幕戦で、「私は何も変わってないんだな」と思いました。このままだと、私のレース人生もすぐに終わってしまうと、第2戦までのインターバルでは本当にいろんなことを考えて……。他のドライバーや先輩方の話、メカニック、エンジニア、もっと他の、外から見ている人の視点だったり、とにかくいろんな人の話を聞いて、「自分は何のために走るんだろう」っていう根本的なところを見つめなおしました。その結果、自分が一番やりたいのは「自分のためよりも周りのため、チームや応援してくれている人のために走ること」だった。だから、勝つことはもちろん大事ですが、クルマを壊さず、きちんと走り切る。そのためにどうレースを戦っていくかを考えるようになりました。今まではがむしゃらなだけだったのが、行くときは行く、抑えるところは抑えるっていうことができるようになった結果、シリーズチャンピオンにたどり着けたんだと思っています。

KYOJO CUPでの戦いを糧に、三浦選手は今シーズン、スーパー耐久シリーズやTCR Japanレースで活躍。今大会ではインタープロトシリーズのプロフェッショナルレースにも参戦し、女性ドライバーの目標としてさらに輝きを増している。彼女に刺激を受け、磨きがかかったKYOJOたちも少なくない。今シーズン、彼女に続く次の女王はいったい誰だろうか。新たな戦いがようやく開幕する。