KYOJO CUP RD1 RACE REPORT

初のポールポジションからスタートした翁長実希が、開幕戦を制する

2022年のKYOJO CUP第1戦が5月15日(日)に富士スピードウェイで開催され、#37 翁長実希(KeePer VITA)がポールポジションから逃げ切り、シーズン初戦を制した。今年で6年目を迎え、認知度も向上。このシリーズを目指す女性ドライバーが増え、この開幕大会には、過去最多となる21台がエントリーした。その分、開幕戦から非常にハイレベルな戦いが繰り広げられ、予選・決勝ともに見どころ盛りだくさんの展開となった。

▶予選

午前8時30分から始まった公式予選。前日までは雨や霧に悩まされていた富士スピードウェイだが、15(日)は、朝から青空が広がり、ドライコンディションで行われた。

セッション開始と同時に各車が続々とコースインし、序盤から目まぐるしくトップタイムが入れ替わった。その中で、周囲に先んじて頭ひとつ抜け出ていたのが#337 斎藤愛未(D.D.R VITA-01)。開始8分のところで2分01秒410を記録すると、翌周には2分01秒150秒を出し、タイムを次々と更新していった。斎藤が少しずつ流れを掴んできているように見えたが、残り10分を切ってトップに躍り出たのが翁長。2分00秒817で斎藤のタイムを上回ると、残り2分のところで他車のスリップストリームも利用し、2分00秒798をマークした。

翁長のタイムを破るものは現れず、チェッカーフラッグ。参戦4シーズン目を迎える翁長が、KYOJO CUPで自身初のポールポジションを獲得した。2番手には0.082秒差で#38 猪爪杏奈(LHG Racing YLT VITA)、3番手には0.177秒差で斎藤がつけ、例年になく、上位争いは接戦となった。

Driver’s Voice

ポールポジション:#37 翁長実希

「今週はドライでの走行機会が少なく、実は予選中も決勝を想定したテストをしていました。車両をパスしながらのアタックでしたが、焦らずに、いろいろなことを感じながら、決勝をどうやって戦おうかを考えていました。KYOJO CUPでは初めてのポールポジションです。今まではポールを獲ろう!と強く意気込んで臨んでいましたが、なかなか獲れませんでした。今回は『ポールを獲る』ではなく『これくらいのタイムを出す』と決めて、少し気を楽にして臨んだら獲れました。うれしいです!」

▶決勝

決勝レースは12時30分から、12周で争われた。全車がスタート位置につきレッドシグナルが消えると、21台のマシンが一斉にスタートしTGRコーナーに飛び込んでいった。ポールポジションの翁長はホイールスピンが多く、いったんは2番手の猪爪に並ばれるが、TGRコーナーのブレーキングで先行しトップを死守。猪爪が2番手で続き、3番手には好スタートを決めた#87 山本龍(おさきにどうぞ☆VITA)が続いた。

後方でも激しいポジションの奪い合いが行われていたが、その中で7番手スタートの#101 岩岡万梨恵(IDI フクダ電子 VITA)がコカ・コーラコーナーでスピンを喫し、大きくポジションダウン。さらにADVANコーナー手前で挙動を乱した#39 奥田もも(CS.ダイワN.AKILANDVITA)が、#13 高野理加(ORC☆サウンドキッズ VITA)と接触してしまう。高野は大きくコースオフし。さらに、接触の際にマシンにダメージが及んでいたようで、3周を終えたところでリタイアとなった。なお、この件に関して、奥田に対しドライビングスルーペナルティが後に科せられた。

1周目から波乱含みの展開となったが、トップの翁長は快調なペースを披露。1周目終了時点で猪爪に対して1.2秒のリードを築くと、その後も周回を重ねるごとに、差を広げていった。

序盤からバトルが白熱したのは3番手争い。山本の背後には6番手からスタートした47 下野璃央(KeePer VITA)が迫り、2周目のダンロップコーナーでインからオーバーテイクを決めて3番手に浮上した。

その後も山本を先頭に、斎藤、#36 荻原友美(KNC VITA)、#86 永井歩夢(Dr.DRY VITA)による4番手争いが白熱し、各所で抜きつ抜かれつのバトルが展開された。毎周のように順位を入れ替えるバトルを繰り広げていた山本と斎藤だが、最終的に6周目で斎藤がこの勝負を制して4番手に浮上。そのままリードを広げていった。

その間、ほぼ毎周にわたってファステストラップを更新するペースで走る翁長。6周目を過ぎた時点で2番手以下に対して3.8秒ものリードを築いた。その後方では猪爪の背後に下野が追いつき、激しい2番手争いが始まった。

7周目に入るところで猪爪の0.5秒後方まで迫った下野は、TGRコーナーで横に並びかけるが、ここは猪爪がポジションを死守。その後も下野の猛追を耐え凌いでいた猪爪だが、9周目のTGRコーナーで、周回遅れの車両が目の前を走っている状態のところで隙を突かれてしまい、3番手に後退する。

それでも2台のバトルは決着がつかない。猪爪は下野に食らいついていき、コース各所でサイドバイサイドのバトルを展開した。そして、ファイナルラップに入ったTGRコーナーでアウト側から再逆転を果たしたものの、下野も負けじと仕掛け続け、コース後半のダンロップコーナーで2番手を奪い返すという、激しいバトルとなった。

こうして2番手以下が接近戦を繰り広げている間に、トップの翁長はさらにリードを広げ、9周目には2分00秒981のファステストラップを記録。最終的に10.0秒のギャップを築き、今シーズンの開幕戦を制するトップチェッカーを受け、翁長自身としては昨年の第3戦から続き、3連勝をマークした。

2位には下野が入り、KeePerカラーのVITAがワンツー・フィニッシュ。3位には猪爪が入った。

Driver’sVoice

優勝:#37 翁長実希

「スタートでタイヤが少し空転して、思ったように前に進まなくて……。猪爪選手が来そうだったんですけど、ブレーキでがんばって、抑えることができました。そこからは、とにかく自分を信じて走りました。初めてのポールスタートでしたが、いい印象で終わることができて良かったです。昨年はチャンピオンを獲るつもりで挑みましたが、初戦でうまくいかず、そこから流れを取り戻すのに時間がかかりました。今年も絶対初戦から勝つつもりでいたので、しっかり歯車が合って、すごく幸先の良いスタートが切れました。次に繋がる流れを作れたのかなと思っています。10月の第2戦に向けて、みんなも絶対に調整して速くなってくると思うので、そこに負けずに、第2戦からまた勝負だと思って、頑張ります!」

2位:#47 下野璃央

「スタートで1台か2台抜けたらいいなと思っていたんですが、実際には2台抜くことができたので、あとは前を追うことに集中しました。ペースも自分が思っていたよりは悪くなかったので、結構追いついていくことができましたし、予選と比べても、クルマが改善されていましたが……。トップに追いつくには、まだまだ足りないので、もっと詰められるところを詰めていきます。次もKeePerのワンツーを達成したいですし、その中でも私が1位で終えられるようにしたいです。(猪爪選手との)バトルでは正直、あと何周か分かっていなかったんですが、『絶対にそろそろゴールだよな?』と思って……。『とにかく、いけるところで抜かないとまずい!』という感じでした。最後のダンロップコーナーでは、ブレーキングにかなり集中しました。相手が猪爪選手だったので、すごく安心してバトルができました。今回VITAに乗るのがほぼ半年ぶりで、苦戦してしまったので、もっと練習しなきゃいけないなと思っています。今年はFIA-F4にも参戦していますが、乗り方もVITAと比べるとかなり違うので、(VITA側の)感覚を取り戻すのに時間がかかってしまいました。次の第2戦までインターバルがあるので、そこも含めてもっと練習して次戦に臨みます」

3位:#38 猪爪杏奈

「翁長選手が速いのは分かっていましたし、本当にどうなるか分からないなというのが正直なところでした。自分のペースを守りつつ、精一杯出し切ろうと思いました。下野選手ともお互いに信頼してバトルがずっとできました。なんだかバトルをしながら、心が通じているような感じがしました。KYOJOも3シーズン目になって、メンタルも皆さんにだいぶ鍛えていただいたので、冷静に走ることができましたし、すごく良いバトルが見せられたと思います。自分に足りないところが、山ほどあるので、第2戦に向けて、この5ヶ月でしっかり準備をして、またみんなに挑みたいなと思います」