IPS PRO RD1-2 RACE REPORT

2022年も開幕戦から白熱の大バトル!第1戦は坪井翔、第2戦は野尻智紀が優勝を飾る

2022年のインタープロトシリーズ POWERED BY KeePer第1大会が5月14日(土)~15日(日)に富士スピードウェイで開催され、プロフェッショナルレースの第1戦は#32 坪井翔(NETZ NOVEL MIE)、第2戦は#7 野尻智紀(J-POINT)が、それぞれ優勝を飾った。開幕大会には8台のIP車両がエントリーし、プロフェッショナルクラスには、SUPER GTのGT500クラスで参戦するドライバーが集結。シーズンの初戦から大白熱のバトルが展開された。

▶予選

14日(土)に行われた公式予選は、前日から降り続いた雨の影響で路面はウエットコンディションだったが、各車が周回を重ねていくごとに路面が乾いていくという難しい状況。どのタイミングでタイムアタックをするのか、各チームで作戦が分かれる展開となった。その中でいち早く2分を切る走りをみせたのが、坪井。開始8分のところで1分59秒903を記録すると、翌周には1分59秒865と、わずかながらタイムを更新し、暫定トップに躍り出た。

セッション終盤になると、路面もだいぶ乾き始め、ライバルたちも続々とタイムを上げていく。#37 福住仁嶺(キーパー号)が1分59秒941を記録すると、#3 阪口晴南(INGING MOTORSPORT)も1分59秒887で2番手に食い込み、最後のアタックに入った。一方の坪井は早い段階でペースを上げていたこともあり、好タイムを記録する絶好のコンディションとなっているこのタイミングでは2分を切るタイムを出すことができなかった。

この隙に逆転ポールポジションを狙う阪口はセクター2で坪井を0.098秒上回っていたが、GRスープラコーナーに進入するところでアタックを中断。実は、この周に入る際、コントロールラインを通過する直前にチェッカーフラッグが出ていたのだ。まさに“ジャストタイミング”という状況で、阪口本人もチェッカーは確認していなかったというが、チームはダブルチェッカーの違反を取られる可能性があるとして、ピットインを指示した。逆転でのポールポジションは叶わず、マシンを降りてきた阪口も悔しそうな表情をみせた。

これでポールポジションは坪井。予選をトップで終えるのは2019年第3大会以来となった。32号車はジェントルマンレースでもエキスパートクラスのポールポジションを獲得しており、チームとしてはダブルポール獲得を達成。2番手には阪口、3番手には福住が続いた。

Driver’s Voice

ポールポジション:#32 坪井翔

「前日からウエットではけっこう調子が良くて、ポールポジション争いができるかなと思いました。ただ、予選では水の量が少なくて、そこにもう少し合わせられたかなと思います。ピットから出ていくのも早かったし、プッシュするのも早すぎました。焦って早めにプッシュをしたら、最後の2~3周、ちょうど路面が乾いてきたところで、タイヤがタレてしまったので、そこを合わせきることができていたらもう少しタイムが出たのかなと思います。昨年はトラブル続きでうまくいっていなかったですし、今週も少しトラブルがありましたが、しっかりとチームが直してくれました。その中で、ジェントルマン・プロともにポールを獲れてクルマも仕上がっていますし、ドライバーも良い感じなので、チームとしては良い予選でした」

▶決勝

翌日15日(日)の決勝レース。今年から子供たちを対象にしたペダルカートのレース「IPKサーキットトライアル」が新たなコンテンツとして加わり、参加する子どもたちをサポートするべくIPSのプロドライバーたちも登場。終始笑顔が絶えない和やかな雰囲気となったが、いざレースとなるとスイッチが切り替わり、各ドライバーとも闘志あふれる姿がみられた。

この日は、曇り空ではあったものの雨の心配はなく路面はドライコンディション。第1戦、第2戦ともに9周で争われた。

2戦連続の1レース目である第1戦はスタートから坪井がトップを死守し、1周目から後続を引き離していく展開となった。2番手争いは阪口と福住が序盤から競り合っていたが、ここに#16 ロニー・クインタレッリ(ララパルーザ)が加わり、3周目のメインストレートでは阪口と福住の間を割って入るような形で仕掛け、3台並んでTGRコーナーに突入。ここはクインタレッリがバトルを制し、一気に2番手に浮上した。

このバトルはまだまだ続き、5周目のTGRコーナーで再び三つ巴の展開に。コカ・コーラコーナーまで続いたバトルは福住が制し、一気に2番手に浮上。そのまま集団から抜け出して坪井を追いかけた。

福住はそのままペース良く周回を重ねると、8周目には1分45秒773の今大会ファステストラップを記録し、坪井の背後に接近。最終ラップに入るところで2人の差は0.1秒となり、最終パナソニックコーナーまで目が離せない攻防戦が繰り広げられた。だが、結局順位は入れ替わらずにそのままチェッカーフラッグとなり、坪井が今季の初戦を制した。2位には福住、3位には阪口が続いた。

第1戦の到着順に、グリッドで再整列が行われ、第2戦がスタート。こちらも9周でのレースとなった。スタートでは坪井に対して福住の加速が良く、混戦状態のままTGRコーナーに突入。ここはなんとか坪井がポジションを守ったが、福住、阪口がすぐ背後に迫った。後方では6番手で2レース目を迎えた#96 中山雄一(岡山トヨペット K-tunes)が大きくポジションアップ。コカ・コーラコーナーに入るところで4番手まで浮上すると、300Rで阪口を追い抜き表彰台圏内に顔を出した。

トップ争いは坪井と福住の一騎打ちとなり、1周目を終えるところからサイドバイサイドのバトルを展開。しばらくは拮抗状態が続いていたが、2周目のパナソニックコーナーで福住が坪井のインに飛び込み、トップを奪った。

これに対して坪井も応戦。クロスラインをとって、福住のイン側に並ぶ形でメインストレートに入ってきた。さらに3番手の中山も好機と捉え、さらにイン側に入って3ワイド状態に。阪口もバトルに加わり、一瞬4台が並ぶ形でTGRコーナーに進入していった。ここでトップを奪ったのは中山だが、後方では福住、坪井、阪口の3台が横並びの接戦を繰り広げていた。

その時、福住と坪井がわずかに接触し、2台ともコントロール不能に。コカ・コーラコーナーを大きくコースオフし、そのまま2台ともコース脇にマシンを止めてリタイアとなった。このアクシデントを回避しようとした阪口もコースオフし、ポジションを落とすことに。一瞬にして第1戦のトップ3が後方に沈んでいく事態となった。

トップに立った中山は、後方に対して1.6秒のリードを築き、トップチェッカーに向けて周回を重ねていったが、2番手に浮上した野尻が徐々に差を詰め、5周目を終えるところで0.4秒後方まで接近した。

一方、3番手以下も接近戦に。#77 松田次生(CARGUY)、#88 佐々木大樹(PASTELM MOTORSPORT)、クインタレッリの3台による激しい攻防戦となっていたが、6周目のGRスープラコーナーで、松田と佐々木が接触。これで松田はスピンを喫し、大きくポジションを落とした。

首位争いは7周目を終えたところで0.2秒差に接近。ここで野尻が勝負をしかけ、TGRコーナーで中山に並びかけると、そのまま並走していき、コカ・コーラコーナー手前でトップ攻略に成功した。野尻はそのままスパートをかけ、中山を寄せ付けずチェッカーフラッグ。野尻が今季初勝利を挙げた。2位には0.3秒差で中山が続いた。3番手には佐々木が入ったが、6周目の接触でペナルティを受け正式結果は6位。これにより、クインタレッリが3位に繰り上がることとなった。

Driver’s Voice

第1戦 優勝:#32 坪井翔

「1レース目は序盤から展開に恵まれて、後ろとの差が少し離れたので、2レース目のことも考えてタイヤをセーブしながら走っていました。ただ、思ったより福住選手が追いついてくるペースが速かったので、残り2~3周は『プッシュしなきゃ』という感じでした。なんとか守りきることができて良かったですけど、2レース目に向けては、いくらタイヤを温存していたとはいえあのペースでは走れないなというのが正直なところで、ちょっと厳しいなと思いました。(2レース目の3ワイドでの接触は)なぜ、あそこでぶつかったのか、車載映像をみて原因を調べないとなんとも言えませんが、調子が悪くなかっただけに、残念ではありました。でも、2019年以来のポールが獲れたりとか、1レース目で勝てたのはかなり久しぶりなことです。昨年はけっこう苦労しましたけど、少し土俵に戻ってこられたと思います。もう少し速く走れるように、今後も色々考えていきたいなと思います」

第1戦 2位:#37 福住仁嶺

「今回、僕たちの37号車のパフォーマンスが高そうに感じていました。乗っている感じも調子が良くて、落ち着いていけば2レース目で前に出られる可能性も十分にあって、勝てるポテンシャルは十分にあったと思います。1レース目を2位で終えて、2レース目もスタートから混戦で、(3周目の攻防戦では)僕が一番外側にいたんですが、一番内側に阪口選手がいることが全く見えていませんでした。(コカ・コーラコーナーに向かって)坪井選手を完全に抜ききって、前にいる状況でした。このままブレーキング勝負でうまくいけば、2番手に戻れると思っていった時に、突然すごい衝撃がありました。その瞬間、なぜ当たってしまったのか状況がつかめていませんでしたが、レース後に坪井選手、阪口選手の話を聞いて、動画を見返した時に3ワイドだったというのを知りました。僕自身も、そこがちゃんと見えていれば結果も変わったと思います。チームに対しても、周りのみんなに対しても申し訳ないです。IP車両は左側にシートがあって右側の視界が少し遮られていたので、難しいところではありました。こういったことが今後起こらないように、もっと良いレースができるようにと思っています」

第1戦 3位:#3 阪口晴南

「正直、キツいレースでした。急きょセッティングを変えてもらって自分たちが持っているベストは出そうとしたんですけど、周りのペースがけっこう良くて、そこにはついていきづらいのかなという感じがありました。良い位置からのスタートだったので、あまり無駄な動きをすることなく順位を守ることに集中しました。結果的に第1戦で3位を獲れたのは良かったです。2レース目に入って、トップとの差が離れなかったので、前で何かあった時のために備えていました。結果的に(3周目の)1コーナーの攻防では、順位を上げられそうな位置をとることができたと思っていました。直後のコカ・コーラコーナーでの接触は残念でしたけど、あそこで3台並ぶと死角が生まれてしまって、仕方ないのかなともいます。そのあとのペースも悪くなくて、前を捉えられそうなところはあったので、そんなに悪くない内容だったかなと思います」

第2戦 優勝:#7 野尻智紀

「僕の中では頑張りすぎてしまったかなという印象です。四脱(走路外走行)もけっこうありました。振り返ると、内容的にはあまり良くないレースでした。ただクルマはペースがありそうだったので、ここ最近ドライの中で、ちゃんと戦えていた感じがなかったので、それはそれで良い収穫だったかなと思います。反省すべき点は全部ドライバー側にあったかなという感じはしますが、ここから修正して、次もまた優勝できるように頑張りたいなと思います。次のインタープロトまで時間があるので、チームも頑張ってくれると思うので、クルマの方のレベルアップもそうですし、僕自身もスーパーフォーミュラやSUPER GTのレースもあるので、ドライバーとしても、しっかりレベルアップをして、第2大会に臨みたいです」

第2戦2位:#96 中山雄一

「1レース目は様子見というところで走っていましたが、思いの外いつもより苦戦している感じがあって『戦い方を考えなきゃ』と思っていたところに、松田選手に仕掛けられてしまって。それで体勢を乱したところに佐々木選手にも抜かれて、最後尾まで落ちてしまいました。でも、最終ラップで2台が争っている隙をついて“漁夫の利”という感じで、スタート順位まで戻すことができました。2レース目のスタートはタイミングよく決まって、野尻選手とロニー選手の加速がにぶったところをうまく抜くことができました。1レース目は様子を見すぎて、置きにいき過ぎていたところがあったので、今回はガッツリいこうと思ったら、けっこうクルマが応えてくれました。それでもトップ2台はストレートが速そうだったんですけど、2周目の最終コーナーで2台がバトルをしていたところに、僕は立ち上がり重視の走りでいって、3ワイドのイン側に入りました。ブレーキングは自信があったので、そこで1位に上がることができました。本当は『このまま終わってほしいな』と思ったんですけど、9周は意外と長く、野尻選手のペースが良くて、どんどん追いつかれました。並ばれた時は僕のタイヤも厳しくなっていて、止まりきれず加速が鈍って、Aコーナーで抜かれる感じでした」

第2戦3位:#16 ロニー・クインタレッリ

「すごく激しい2レースでした。1レース目はタイヤも新品で、最初の2~3周はペース良く2番手まで上がっていきましたが、そこから僕たちの課題なんですが、すごくアンダーステアで苦労してしまいました。タイヤのピークが過ぎてからすごく曲がらなくなって、追いつかれてしまいました。2レース目は、スタートで順位を下げてしまいましたが、激しいバトルでギリギリな状態でしたし、危険なところを避けたりという場面もありましたけど、最終的に3位で終えることができました。富士スピードウェイで久しぶりに表彰台に乗れて、嬉しかったです。次大会までインターバルがありますが、富士スピードウェイでは8月にSUPER GTがありますし、6月には富士24時間レースにも出ます。初めての24時間レース参戦で楽しみですし、8月のGTも良い結果を残して、10月の第2大会を迎えたいです」