混戦のIPエキスパートクラスは、永井秀貴が開幕2連勝を達成!
2022 インタープロトシリーズ POWERED BY KeePer第1大会が5月14日(土)~15日(日)に富士スピードウェイで開催され、ジェントルマンレースのIPエキスパートクラスは#32 永井秀貴(NETZ NOVEL MIE)が開幕2連勝を飾った。
昨年も、各大会で大接戦のバトルが繰り広げられたインタープロトのジェントルマンレース。特にエキスパートクラスは、年々レベルも上がり、プロフェッショナルレース顔負けの熱戦が展開されている。開幕大会には、8台のIP車両がエントリー。そのうち、エキスパートクラスは#3 FLYING RAT(INGING MOTORSPORT)、#32 永井秀貴(NETZ NOVEL MIE)、#37 大蔵峰樹(キーパー号)の3台による争いとなった。
14日(土)の公式予選は、前日から降り続いている雨の影響で路面はウエットコンディション。各車とも慎重にコースインし、タイヤを温めながらタイムアタックに臨んだが、滑りやすい路面に足元をとられ、スピンを喫するマシンも何台かいた。
その中で、永井はセッション序盤から好ペースで周回し、開始7分が経過したところで2分02秒台のタイムを記録すると、その後もトップタイムを更新し続けた。セッション後半になると小雨状態となり、永井はさらにペースアップ。残り5分を切ったところで、コース幅いっぱいを使ったアグレッシブな走りをみせ、2分01秒511のベストタイムを記録した。
これに肉薄する走りを見せたのが大蔵。残り5分のところで2分02秒126を記録すると、路面の水の量が減った最終ラップでは渾身のアタックを披露した。特にセクター3では永井のタイムを上回る速さをみせたが、トップタイムには0.424秒届かなかった。これによりポールポジションは永井が獲得し、大蔵がフロントローを分け合う結果に。FLYING RATは総合6番手で予選を終えた。
「昨日はメカニカル的なところでトラブルもあったのですが、チームのみんながうまく仕上げてくれました。ドライビングの部分では、昨日は僕もタイムを上げられていなかったところを、坪井選手のコーチングでだいぶタイムが上がって、昨日の最後は良いタイムを出せました。その流れで今日の予選を迎えられたので、そういった意味では良い方向につなげられたなと思っています。予選では途中に雨が収まったので、もう少し遅く出てアタックをした方が良かったのかなと思いましたが、あまりリスクも犯したくなかったので早めに戻りました。ポールポジションは久しぶりなので嬉しいです。ただ、午後はコンディションが変わりそうですし、ドライ路面になるとまた違ってくると思います。とにかく、みんなと楽しめるレースをしたいなと思います」
朝方の雨はすっかりと止み、雨もすっかり止み、路面も一部ウエットパッチが残っているがドライコンディションに。14時40分から始まった第1戦の決勝レースは、IP車両はスリックタイヤを装着して、12周のレースに臨んだ。レース開始時刻が近づくにつれて霧が濃くなっていき、いつもより視界が悪い中でのスタートとなったが、接触等のアクシデントもなく、各車がTGRコーナーを通過していった。
ポールポジションの永井はポジションをしっかりと守って1周目を終えたが、背後には大蔵が接近。2周目のADVANコーナー立ち上がりで横に並びかけた大蔵が300Rで一瞬トップに出るが、直後のダンロップコーナーで永井がポジションを奪い返す。ここから最終ラップまで、2人による接近戦が続いていった。
一方、総合の3番手争いはジェントルマンクラスの#77 山﨑裕介(CARGUY)と、FLYING RATの攻防戦が展開された。こちらはTGRコーナーを中心に、ほぼ毎周にわたってサイドバイサイドのバトルが繰り広げられたが、山﨑がうまく相手を抑え込み、総合3番手を死守していった。
レース中盤に入ると、2番手の大蔵が徐々にペースを上げ、5周目と6周目にはファステストラップを記録。永井との差を縮めると、8周目のTGRコーナーでアウトから並びかけ追い抜きを試みた。これに対して永井も応戦し、2台は横並びの状態でコカ・コーラコーナーに進入。ここでイン側にいた大蔵が、ついにトップに浮上した。
2番手に下がった永井だが、諦めずにトップ奪還を目指す。9周目には1分48秒687のファステストラップを記録すると、続く10周目にも1分48秒台を叩き出し、11周目のTGRコーナーでインから並びかけた。そのまま2台はコース中盤のADVANコーナーまで一歩も引かず、サイドバイサイドのバトルを展開。最終的に大蔵がトップを守り切った。
しかし、後半のGRスープラコーナーで、大蔵が僅かに挙動を乱し失速。それを見逃さなかった永井が、インから追い抜き、再びトップを奪い返した。
ファイナルラップに入っても、2人の接近戦は各コーナーで繰り広げられたが、冷静にポジションを守り切った永井がトップチェッカーを受け、シーズン開幕戦を制した。2位には大蔵が続いたが、僅か0.2秒差でのゴールだった。「永井選手がファイナルラップの1つ手前ですごく近づいてきて『GRスープラで仕掛けてくるかな?』と思って、ミラーで相手を見た瞬間に、気持ち(リアが)出てしまって……ミスですね。」と笑顔を見せつつも、悔しさは隠しきれない様子だった。
レース序盤からジェントルマンクラスの山﨑と抜きつ抜かれつの攻防を繰り広げたFLYNG RATはエキスパートクラスの3位に。最終的に山﨑を攻略することはできなかったものの、見どころの多いレースを披露した。
「詳細を覚えていないくらい、ギリギリのバトルでした。本当に良いレースができたなと、自分でも思っています。ドライだったんですけど、ところどころにウエットパッチが出ていて、ちゃんと通れるラインが1本くらいしかない状況でした。そこをはみ出て滑ってしまった時に、向こうに差されてしまいましたし、向こう側にミスが出た時に、僕が抜けたという、そんな攻防戦でした。すごく楽しくレースができました。(白熱のバトルを)皆さんに楽しんでもらえたのなら、僕も嬉しいです。本当に、タイヤマネジメントとかもする余裕が全くなくて、(大蔵選手に抜かれた後は)離されないように、必死についていきました。どこかでラインがクロスした時に、同じようなこと(濡れているところに乗って隙ができること)が起きるだろうと思って、走っていました。1コーナーからAコーナーまで、隣同士で並んだりとか、そういうバトルがあって、大蔵選手もしっかり距離感を保って、見てくれていたので、安心してバトルができました。この流れで、明日の第2戦も頑張ります!」
15(日)午前の第2戦は、前日までとは打って変わり、青空が広がるドライコンディションのもとでのレースとなった。グリッドは公式予選でのセカンドベストタイム順で、第1戦に引き続き永井がポールポジション、大蔵が2番グリッドから9周のレースが始まった。
抜群のスタートを決めてTGRコーナーに突入した永井に対し、大蔵は3番手スタートの山﨑に抜かれ、1ポジション後退する。2周目のTGRコーナーで2番手を取り戻し、トップを追いかけ始めたが、GRスープラコーナーで単独スピンを喫してしまい、7番手まで後退してしまった。
この間にトップの永井は着々とリードを広げ、4周目に1分48秒421のファステストラップを記録し、2番手以下との差を6.4秒にまで広げた。
一方、総合2番手につけた山﨑だったがストレートスピードが思うように伸びず、4周目にはFLYING RATの先行を許してしまう。しかし5周目の最終パナソニックコーナーでFLYING RATがスピンを喫してしまい、ポジションダウン。これで山﨑が総合2番手に返り咲くが、その後方では序盤にスピンを喫した大蔵が「とにかく、追い上げるしかなかった」と、驚異的なペースで追い上げを始めていた。6周目には1分47秒758のファステストラップを記録すると、前のマシンを次々とオーバーテイクしていき、9周目には総合4番手に浮上。残り2周というところで、2番手の山﨑、3番手の#96 末永一範(岡山トヨペットK-tunes)の背後につき、三つ巴のバトルが始まった。
山﨑、末長ともにジェントルマンクラスではあるが速さを持っているだけに、攻略は一筋縄でいかないかと思われた。しかし、何としても序盤の遅れを取り戻したいという大蔵の気迫が、この時点では遥かに上回っていた。ファイナルラップのTGRコーナーで3ワイドのバトルに持ち込み、まずは末永を攻略。そのまま山﨑に並びかけ、ダンロップコーナーでのサイドバイサイドの末、ついに総合2番手に返り咲いた。
結局、スタートから一度もトップを譲らなかった永井は、最終的に16.2秒もの大差をつけて、独走で開幕2連勝を飾った。クラス2位には大蔵、3位にはFLYING RATが続いた。