混戦模様となった第3大会。第5戦は野尻智紀が今季2勝目をマーク、第6戦ではクインタレッリが6年ぶりに勝利飾る
2022 インタープロトシリーズ POWERED BY KeePer 第3大会が11月12日(土)・13日(日)に富士スピードウェイで開催。第5戦は#7 野尻智紀(J POINT)がポール・トゥ・ウィンを果たし、ウエットコンディションとなった第6戦は#16 ロニー・クインタレッリ(ララパルーザ)が、6年ぶりとなる勝利を飾った。
第2大会から約3週間のインターバルで開催された第3大会では、インタープロトクラスは11台がエントリー。第2大会で初参戦した表参道メディカルクリニックが2台体制となり、新たに加わった27号車のプロクラスには、現在SUPER GTとスーパーフォーミュラで活躍するジュリアーノ・アレジが抜てきされた。「クルマのフィーリングとは他のカテゴリーとは違って特殊なところはあるけど、とても楽しいです」と練習走行初日から満面の笑みをみせていた。
22日(土)に晴天のもとで行われた公式予選では、各車ともスリップストリームを利用して、すこしでもタイムを稼ごうと、前回以上に激しいポジション取りが行われた。そんな中、先陣を切って真っ先に好タイムを叩き出したのが、#44 山下健太(NAVUL)。集団から抜け出して1分44秒784を記録すると、最終アタックで1分44秒393までタイムを伸ばした。
これに対して、各車はセッション終盤に続々とタイムを更新。野尻が山下のトップタイムを唯一上回り、1分44秒357を記録して、2019年第2大会以来となるポールポジションを獲得した。2位には0.036秒差で山下となり、3位には#37 福住仁嶺(キーパー号)がつけた。最終的にトップ7台が0.4秒以内にひしめく大接戦の予選となった。
「ここ最近、IPSでのポールは“夢のまた夢”みたいな感じで、良くても4~5番手にいたので、久しぶりにポールを獲れて嬉しいです。今回はいつも以上に、スリップを使おうとしてのポジションの奪い合いがすごかったですね。でも、スリップを使えないとコンマ3~4秒は変わってきてしまうので、スリップは欲しいですね。僕は最初に集団の先頭で出ていて、みんながついてくるだろうから、自分の展開を作ろうと思っていました。最後は、どこでアタックしようか悩みましたけど、すごく良い場所を取れたと思います。(前回のジェントルマン予選でクラッシュした7号車を修復しての今大会参戦について)なかなかパーツが揃わないなか、みんなが徹夜でクルマを直してくれたので、今日しっかり走れたということは、チームにとってはすごく意味があると思うし、自分もそういう走りができたので、良かったなと思います」
23日(日)は一転して曇り空となり、非常に強い風が吹き荒れるなかで第5戦がスタートした。その風の影響もあってか、TGRコーナーではブレーキングで止まりきれない車両が続出。後方では#8 大滝拓也(表参道メディカルクリニック)と#96 中山雄一(岡山トヨペットK-tunes)が接触し、2台ともがスピン。大滝はなんとかレースに復帰できたが、中山はマシンにダメージを負っており、コカ・コーラコーナーのランオフエリアにマシンを止めて、無念のリタイアとなってしまった。この接触行為に対して大滝にトライブスルーペナルティが出された。
トップ集団では野尻が先頭を死守し、コカ・コーラコーナーでの3ワイドバトルを制した坪井が2番手に続いた。3番手争いは#3 阪口晴南(INGING MOTORSPORT)に福住、山下が仕掛けていくという激しいポジション争いが展開された。
2周目に入ると阪口と福住がサイドバイサイドでTGRコーナーに飛び込み、2台とも外側にはらんでしまったが、阪口はなんとかポジションを死守。福住は後方集団に飲み込まれて一時は7番手まで後退した。ここから集団が大きく2つに分かれ、野尻、坪井、阪口、山下の先頭集団と、アレジを先頭とする第2集団が形成され、それぞれで激しいバトルが繰り広げられた。
なかでも注目を集めたのが、今回IPS初参戦となるアレジで、クインタレッリの猛追をうまく抑え込んでいく。7周目のTGRコーナーではブレーキをロックさせながら進入し、ポジションを守るものの、ペース的にはクインタレッリの方が上で、7周目のパナソニックコーナーでポジションが入れ替わった。アレジは福住にも攻略され、7番手まで後退した。
一方、トップ争いも一進一退の攻防が続いた。逃げようとする野尻に坪井と阪口が食らいつき、それを後方の山下が様子をみるという緊迫した展開が続いたが、結局順位は入れ替わらず。野尻がトップでチェッカーを受け、今季2勝目を挙げた。2位には坪井、3位には阪口が入った。なお、阪口は3周目に1分44秒843のファステストラップを記録した。
第5戦の到着順で、グリッドに再整列し、第6戦のスタート準備に移っていくが、ちょうどダンロップコーナーの先には黒い雲が接近してきており、今にも雨が降りそうな状況だった。これを見て真っ先に動いたのが、第5戦を6位で終えたクインタレッリ。まだ雨は降ってきていなかったが、グリッドに再整列せずに、ピットにマシンを進め、インターバルの間にタイヤ交換を済ませたのだ。
その他の車両は、通常通りグリッドについたが、第6戦が始まるまでのわずか数分の間に雨が降り始める。路面も次第に濡れていき、フォーメーションラップが始まる頃にはコース全域がウエットコンディションとなっていた。
この状況をみて、フォーメーションラップ終了のタイミングで、トップの野尻をはじめ数台がピットイン。坪井、山下、福住、大滝がスリックタイヤのままでレース続行を決断し、第6戦のスタートが切られた。ただ、いち早くレインタイヤを装着したクインタレッリのペースが圧倒的によく、1周目でトップに浮上。そのまま後続を一気に引き離し、独走状態となった。
2番手争いはスリックタイヤを履く坪井、福住、山下の三つ巴に。非常に滑りやすい状況で、ところどころコースオフがありながらも、懸命にマシンをコントロールしてポジションを奪い合った。レース中盤にはいってペースを掴んだのが福住。4周目に2番手に浮上すると、少しずつ2台との差を広げていった。
フォーメーションラップ終了時にタイヤ交換をして、大きく後退したドライバーたちも逆転を目指してペースを上げていた。なかでもペースよく走行していたのが、#55 宮田莉朋(人馬一体ドライビングアカデミー)。スリックタイヤを履いているドライバーよりも1周あたり7秒以上速いペースで追い上げ、最終ラップで山下を捉えて4番手に浮上した。
結局、レース中盤からは完全に独走状態だったクインタレッリが、2番手以下に対して40秒もの大差をつけ、2016年の第8戦(第4大会)以来、実に6年ぶりとなる優勝を飾った。2位にはスリックタイヤで粘った福住が入り、3位も同じく雨のなかをスリックタイヤで走りきった坪井が入った。
注目のポイントランキングでは、目まぐるしく変わる天候の中で、両レースとも上位フィニッシュを果たした坪井が、87ポイントに伸ばし首位をキープ。第5戦を制した野尻が68ポイントで2番手に上がり、阪口が65ポイントで3番手となっている。なお、12月11日(土)・12日(日)に行われる最終第4大会は、獲得できるポイントが1.5倍となる。
「第1レースに関しては、けっこう風も強く、ところどころでミスをしてしまうところもありましたが、なんとかトップを守りきれてよかったです。第1レースでのクルマの状況と、これからの天候のことも加味して、第2レースの最初でタイヤ交換をしました。あわよくば坪井選手も同じ作戦をとってくれたらいいなと思ったのですが、彼はそのままコースに留まる選択をしたので、残念ながら彼のほうが第2レースの順位が上になりました。そこは残念なところですけど、こればっかりは仕方ないかなと思いますし、雨の量など、もう少し展開が違っていれば……というタラレバはありますけど、『こういうこともあるよな』と感じたレースでした」
IPS 第5戦 2位、第6戦 3位:#32 坪井翔
「1コーナーのブレーキが思ったより止まりきれない感じで、スタートはけっこう良かったのですが、前が詰まる感じになって……。1コーナーはインのラインをキープして曲がったんですけど、(コカ・コーラコーナー)に向かって、両サイドに阪口選手と福住選手がいました。開幕大会(第2戦)と同じ3ワイドだったので、あの時のことを思い出しましたけど、みんな学習していて、クリーンにバトルができました。そこで2番手に上がったので、ラッキーだなというところでしたが、思ったよりペースが悪くて、野尻選手についていくので精一杯で、阪口選手が後ろからきているのに応戦する形になってしまいました。前回のような余裕はなかったです。(レインタイヤに交換した)ロニー選手のタイミングは絶妙だったなと思います。あの時点では、2番手にいる以上、動けませんでした。 (第6戦の)レースが始まる瞬間に雨がポツポツときていて、タイヤ交換しようか迷いましたが、僕は2番手で左側の隊列にいるので、最後までみんなの様子を見て、それに合わせて対応できる位置ではなく、そのまま行くしかないなと思いました。正直、タイヤ交換があるレースではないので、ピット作業でのロスタイムも考えて『9周だったらスリックで耐えられるかな』と思ってステイアウトを選びました。結果的に良い選択だったと思います。途中で飛び出してしまったところがあり、それがなければ2番手でゴールできたかもしれないので、そこは勿体なかったですけど、しっかり表彰台を獲得できたので、良かったかなと思います。(ランキングトップについて)2019年以来のチャンスなので、(チャンピオンは)獲りたいです。最終大会はポイントが1.5倍になるので、今も全然気が抜けるポイント差ではありません。ドライの予選・決勝に関しては、まだまだダメだった部分があったので、最終大会に向けてしっかりとアジャストして、チャンピオンを獲れるように頑張りたいです」
「1レース目で3位に入って、ファステストも獲れて良かったところもありましたけど、その後のタイヤ交換のタイミングに関しては難しいところがありました。あのタイミングだと、後ろにいる車両の方がギャンブルはできたのかなと思います。僕もタイヤ交換のタイミングとしては決して悪くはなかったと思いますが、ピットの止め方のところでロスしてしまったので、あれが少し痛かったです。戦略的には間違っていなかったですし、あの状況の中をスリックで走っていた福住選手のペースがすごかったなと思いました。損には働いてしまいましたけど、悔いはないです」
「タイヤ交換のタイミングは完全に僕の判断でした。朝から天気予報も細かくチェックしていましたし、だいたい富士スピードウェイではBコーナー(ダンロップコーナー)あたりから雨が来るので、上空の雨雲を見て判断しました。結果的にそれがうまくいって良かったです。インタープロトで勝つのは本当に久しぶりなので、とても嬉しいです。最終大会はポイントも1.5倍で逆転のチャンスはあるし、この勝利でチームのモチベーションも上がると思うので、またしっかりと準備していきたいです。昨年亡くなられた東名スポーツの中野社長にも、やっと良い報告ができます」
「1レース目はスタート直後に一瞬2番手まで上がりましたが、そこから1コーナーでのオーバーシュートもあってポジションを落としていました。最後は挽回して5番手でチェッカーを受けましたけど、ロングランのペースは今までより調子は良くないのかなというところがありました。2レース目にかけては、ウエットタイヤに交換するのが一番の正解だったと思いますが、グリッドについてしまった以上はいくしかないと決めて、そのままスタートしました。ただペースも悪くなく、大きなミスもなかったので、2番手まで順位を挽回することができました」